巻第四|秋歌 上

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明けぬとて
野辺より山に
入る鹿の
跡吹き送る
萩の下風
(351)
野辺ごとに
音連れ渡る
秋風を
あだにもなびく
花薄かな
(350)
花薄
また露深し
穂に出でて
眺めしと思ふ
秋の盛りを
(349)
ほのかにも
風は吹かなん
花薄
結ぼほれつつ
露に濡るとも
(348)
小倉山
麓の野辺の
花薄
ほのかに見ゆる
秋の夕暮れ
(347)
雄鹿の
入野の薄
初尾花
いつしか妹が
玉枕にせん
(346)
うら枯るる
浅茅が原の
刈る萱の
乱れて物を
思ふころかな
(345)
山賤の
垣穂に咲ける
朝顔は
東雲ならで
逢ふ由もなし
(344)
起きて見んと
思ひしほどに
枯れにけり
露よりけなる
朝顔の花
(343)
花見にと
人やりならぬ
野辺に来て
心の限り
尽くしつるかな
(342)
いと書くや
袖はしほれし
野辺に出でて
昔も秋の
花は見しかと
(341)
薄霧の
真垣の花の
朝湿り
秋は夕べと
誰か言ひけん
(340)
淵袴
主は誰とも
知ら露の
凍えて匂ふ
野辺の秋風
(339)
夕されば
玉散る野辺の
女郎花
枕定めぬ
秋風ぞ吹く
(338)
女郎花
野辺の古里
思ひ出でて
宿りし虫の
声や恋しき
(337)
誰をかも
待つ千山の
女郎花
秋と契れる
人ぞあるらし
(336)
秋の野を
分け行く露に
移りつつ
我が衣手は
花の香ぞする
(335)
雄鹿の
朝立つ野辺の
秋萩に
玉と見るまで
置ける白露
(334)
秋萩の
咲き散る野辺の
夕露に
濡れつつ来ませ
夜は更けぬとも
(333)
置く露も
しつ心なく
秋風に
乱れて咲ける
真野の萩原
(332)
萩が花
真袖にかけて
高天の
尾上の宮に
領巾振るや誰
(331)
秋萩を
折らでは過ぎし
月草の
花摺り衣
露に濡るとも
(330)
狩衣
我とはすらし
露深き
野原の萩の
花に任せて
(329)
川水に
鹿の柵かけて
けり
浮きて流れぬ
秋萩の花
(328)
棚機は
今や別るる
天の川
川霧立ちて
千鳥鳴くなり
(327)
いとどしく
思ひけぬべし
棚機の
別れの袖に
置ける白露
(326)
わくらばに
天の川浪
寄るながら
明くる空には
任せずもがな
(325)
棚機の
逢ふ瀬絶えせぬ
天の川
いかなる秋か
渡り初めけん
(324)
星合ひの
夕べ涼しき
天の川
紅葉の橋を
渡る秋風
(323)
いかばかり
身にしみぬらん
棚機の
妻待つ宵の
天の川風
(322)
眺むれば
衣手涼し
久方の
天の河原の
秋の夕暮れ
(321)
棚機の
渡る舟の
梶の葉に
幾秋書きつ
露の玉づさ
(320)
棚機の
衣の裾は
心して
吹き流しそ
秋の初風
(319)
棚機の
天の羽衣
打ち重ね
濡る夜涼しき
秋風ぞ吹く
(318)
雲間より
星合ひの空を
見渡せば
しつ心なき
天の川浪
(317)
袖ひぢて
我が手に結ぶ
水の面に
天つ星合ひの
空を見るかな
(316)
年を経て
住むべき宿の
池水は
星合ひの影も
面なれやせん
(315)
この夕べ
降りつる雨は
彦星の
渡る舟の
楫の雫か
(314)
大空を
我も眺めて
彦星の
妻待つ夜さへ
ひとりかも寝ん
(313)
吹き結ぶ
風は昔の
秋ながら
ありしにも似ぬ
袖の露かな
(312)
朝ぼらけ
沖の上葉の
露見れば
ややはた寒し
秋の初風
(311)
秋風は
吹き結べども
白露の
乱れて置かぬ
草の葉ぞなき
(310)
手もだゆく
馴らす葵の
置き所
忘るるばかり
秋風ぞ吹く
(309)
うたた寝の
朝明けの袖に
変はるなり
馴らす葵の
秋の初風
(308)
日を経つつ
音こそ増され
泉なる
信太の森の
千枝の秋風
(307)
秋来ぬと
松吹く風も
知らせけり
必ず沖の
上葉ならねど
(306)
沖の葉も
契りありてや
秋風の
訪れ初むる
妻となりけん
(305)
夕されば
沖の葉向けを
吹く風に
言ぞともなく
涙落ちけり
(304)
夕暮れは
沖吹く風の
音まさる
今はたいかに
寝覚めせられん
(303)
朝霧や
立田の山の
里ならで
秋来にけりと
誰か知らまし
(302)
三し伏つき
植ゑし山田に
ひたはへて
また袖濡らす
秋は来にけり
(301)
あはれいかに
草葉の露の
凍るらん
秋風立ちぬ
御焼野の原
(300)
押しなべて
物を思はぬ
人にさへ
心を尽くる
秋の初風
(299)
昨日まで
よそに忍びし
下露の
末葉の露に
秋風ぞ吹く
(298)
秋はただ
心より置く
夕露を
袖のほかとも
思ひけるかな
(297)
水茎の
丘の楠葉も
色づきて
今朝うら悲し
秋の初風
(296)
敷妙の
枕の上に
過ぎぬなり
露を訪ぬる
秋の初風
(295)
あはれまた
いかに忍ばん
袖の露
野原の風に
秋は来にけり
(294)
深草の
露の縁を
契りにて
里を隔てず
秋は来にけり
(293)
明けぬるか
衣手寒し
須賀原や
伏見の里の
秋の初風
(292)
伏見山
松の陰より
見渡せば
開くる田の面に
秋風ぞ吹く
(291)
吹く風の
色こそ見えね
高砂の
尾上の松に
秋は来にけり
(290)
昨日だに
問はむと思ひし
津の国の
幾田の森に
秋は来にけり
(289)
いつも聞く
麓の里と
思へども
昨日に変はる
山おろしの風
(288)
この寝ぬる
夜の間に秋は
来にけらし
朝明けの風の
昨日にも似ぬ
(287)
いつしかと
沖の葉向けの
片よりに
そそや秋とぞ
風も聞こゆる
(286)
神なびの
神室の山の
楠葛
裏吹き返す
秋は来にけり
(285)
巻第四|秋歌 上

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