747
月やあらぬ
春や昔の
春ならぬ
我が身ひとつは
もとの身にして
748
花薄
我こそ下に
思ひしか
穂に出でて人に
結ばれにけり
749
よそにのみ
聞かましものを
音羽川
渡るとなしに
見慣れそめけむ
753
雲もなく
泣きたる朝の
我なれや
厭はれてのみ
世をは経ぬらむ
767
夢にだに
逢ふこと難く
なりゆくは
我や老いぬる
人や忘るる
774
今は来じ
と思ふものから
忘れつつ
待たるることの
またも止まぬか
775
月夜には
来ぬ人待たる
垣曇り
雨も降らなむ
侘びつつも寝む
776
植ゑてし
秋田刈るまで
見え来ねば
今朝は初雁の
音にぞ鳴きぬる
782
今はとて
我が身時雨に
降りぬれば
言の葉さへに
移ろひにけり
783
人を思ふ
心の木の葉に
あらばこそ
風のまにまに
散り乱れめ
784
天雲の
よそにも人の
なりゆくか
さすがに目には
見ゆるものから
787
秋風は
身を分けてしも
吹かなくに
人の心の
空になるらむ
790
時過ぎて
枯れゆく小野の
浅茅には
今は思ひぞ
絶えず燃えける
791
冬枯れの
野辺と我が身を
思ひせば
燃えても春を
待たましものを
792
水の泡の
消えて憂き身と
言ひながら
流れて猶も
頼まるるかな
793
水無瀬川
ありて行く水
なくはこそ
つひに我が身を
絶えぬと思はめ
794
吉野川
よしや人こそ
つらからめ
早く言ひてし
ことは忘れじ
795
世の中の
人の心は
花染の
移ろひやすき
色にぞありける
796
心こそ
うたてにくけれ
染めざらば
移ろふことも
惜しからましや
797
色見えて
移ろふものは
世の中の
人の心の
花にぞありける
798
我のみや
世を憂く雲雀
鳴き侘びむ
人の心の
花と散りなば
800
今はとて
君が枯れなば
我が宿の
花をば一人
見てや忍ばむ
801
忘れ草
枯れもやすると
つれもなき
人の心に
霜は置かなむ
804
初雁の
鳴きこそ渡れ
世の中の
人の心の
秋し受ければ
805
あはれとも
憂しとも物を
思ふ時
なぞか涙の
いとながるらむ
808
逢ひ見ぬも
憂きも我が身の
唐衣
思ひ知らずも
解く紐かな
812
逢ふことの
もはら絶えぬる
時にこそ
人の恋しき
ことも知りけれ
814
恨みても
泣きても言はむ
方ぞなき
鏡に見ゆる
影ならずして
815
夕されば
人なき床を
打ち払ひ
嘆かむためと
なれる我が身か
817
荒尾田を
荒鋤き返し
返しても
人の心を
見てこそ止まめ
818
有磯海の
浜の真砂と
頼めしは
忘るることの
数にぞありける
819
葦辺より
雲居を指して
行く雁の
いや遠ざかる
我が身悲しも
822
秋風に
逢ふ頼みこそ
悲しけれ
我が身虚しく
なりぬと思へば
823
秋風の
吹き裏返す
楠の葉の
恨みても猶
恨めしきかな
824
秋といへば
よそにぞ聞きし
仇人の
我を古せる
名にぞありける
825
忘らるる
身を内橋の
中絶えて
人も通はぬ
年ぞ経にける
826
逢ふことを
長良の橋の
長らへて
恋ひ渡るまに
年ぞ経にける
827
憂きながら
消えぬる泡とも
なりななむ
流れてとだに
頼まれぬ身は
747
月やあらぬ
春や昔の
春ならぬ
我が身ひとつは
もとの身にして
748
花薄
我こそ下に
思ひしか
穂に出でて人に
結ばれにけり
749
よそにのみ
聞かましものを
音羽川
渡るとなしに
見慣れそめけむ
753
雲もなく
泣きたる朝の
我なれや
厭はれてのみ
世をは経ぬらむ
767
夢にだに
逢ふこと難く
なりゆくは
我や老いぬる
人や忘るる
774
今は来じ
と思ふものから
忘れつつ
待たるることの
またも止まぬか
775
月夜には
来ぬ人待たる
垣曇り
雨も降らなむ
侘びつつも寝む
776
植ゑてし
秋田刈るまで
見え来ねば
今朝は初雁の
音にぞ鳴きぬる
782
今はとて
我が身時雨に
降りぬれば
言の葉さへに
移ろひにけり
783
人を思ふ
心の木の葉に
あらばこそ
風のまにまに
散り乱れめ
784
天雲の
よそにも人の
なりゆくか
さすがに目には
見ゆるものから
787
秋風は
身を分けてしも
吹かなくに
人の心の
空になるらむ
790
時過ぎて
枯れゆく小野の
浅茅には
今は思ひぞ
絶えず燃えける
791
冬枯れの
野辺と我が身を
思ひせば
燃えても春を
待たましものを
792
水の泡の
消えて憂き身と
言ひながら
流れて猶も
頼まるるかな
793
水無瀬川
ありて行く水
なくはこそ
つひに我が身を
絶えぬと思はめ
794
吉野川
よしや人こそ
つらからめ
早く言ひてし
ことは忘れじ
795
世の中の
人の心は
花染の
移ろひやすき
色にぞありける
796
心こそ
うたてにくけれ
染めざらば
移ろふことも
惜しからましや
797
色見えて
移ろふものは
世の中の
人の心の
花にぞありける
798
我のみや
世を憂く雲雀
鳴き侘びむ
人の心の
花と散りなば
800
今はとて
君が枯れなば
我が宿の
花をば一人
見てや忍ばむ
801
忘れ草
枯れもやすると
つれもなき
人の心に
霜は置かなむ
804
初雁の
鳴きこそ渡れ
世の中の
人の心の
秋し受ければ
805
あはれとも
憂しとも物を
思ふ時
なぞか涙の
いとながるらむ
808
逢ひ見ぬも
憂きも我が身の
唐衣
思ひ知らずも
解く紐かな
812
逢ふことの
もはら絶えぬる
時にこそ
人の恋しき
ことも知りけれ
814
恨みても
泣きても言はむ
方ぞなき
鏡に見ゆる
影ならずして
815
夕されば
人なき床を
打ち払ひ
嘆かむためと
なれる我が身か
817
荒尾田を
荒鋤き返し
返しても
人の心を
見てこそ止まめ
818
有磯海の
浜の真砂と
頼めしは
忘るることの
数にぞありける
819
葦辺より
雲居を指して
行く雁の
いや遠ざかる
我が身悲しも
822
秋風に
逢ふ頼みこそ
悲しけれ
我が身虚しく
なりぬと思へば
823
秋風の
吹き裏返す
楠の葉の
恨みても猶
恨めしきかな
824
秋といへば
よそにぞ聞きし
仇人の
我を古せる
名にぞありける
825
忘らるる
身を内橋の
中絶えて
人も通はぬ
年ぞ経にける
826
逢ふことを
長良の橋の
長らへて
恋ひ渡るまに
年ぞ経にける
827
憂きながら
消えぬる泡とも
なりななむ
流れてとだに
頼まれぬ身は