677 陸奥の 安積の沼の 花かづみ かつ見る人に 恋ひや渡らむ

677

陸奥の
安積の沼の
花かづみ
かつ見る人に
恋ひや渡らむ
746

形見こそ
今は仇なれ
これなくば
忘るる時も
あらましものを
745

逢ふまでの
形見とてこそ
留めけめ
涙に浮かぶ
藻屑なりけり
744

逢ふまでの
形見も我は
何せむに
見ても心の
慰さまなくに
743

大空は
恋しき人の
形見かは
物思ふことに
眺めらるらむ
742

山賤の
垣穂に生へる
青葛
人は来れども
言伝てなし
741

古里に
あらぬものから
我がために
人の心の
荒れて見ゆらむ
740

逢坂の
夕付け鳥に
あらばこそ
君が行き来を
泣く泣くも見め
739

待てと言はば
寝ても行かなむ
強ひて行く
駒の足折れ
前の棚橋
738

玉鉾の
道は常にも
惑はなむ
人を問ふとも
我かと思はむ
737

今はとて
返す言の葉
拾ひ置き
己がものから
形見とや見む
736

頼めこし
言の葉今は
返してむ
我が身古れば
置き所なし
735

思ひ出でて
恋しき時は
初雁の
鳴きて渡ると
人知るらめや
734

いにしへに
なほ立ち返る
心かな
恋しきことに
物忘れせで
733

海人とあれにし
床を今さらに
払はば
袖や泡と浮き
なむ
732

堀江漕ぐ
棚無し小舟
漕ぎ返り
同じ人にや
恋ひ渡りなむ
731

陽炎の
それかあらぬか
春雨の
降る日となれば
袖ぞ濡れぬる
730

めづらしき
人を見むとや
しかもせぬ
我が慕ひ紐の
解け渡るらむ
729

色もなき
心を人に
染めしより
移ろはむとは
思ほえなくに
728

曇り日の
影としなれる
我なれば
目にこそ見えね
身をば離れず
727

海人の住む
里の標に
あらなくに
怨みむとのみ
人の言ふらむ
726

千々の色に
移ろふらめと
知らなくに
心し秋の
紅葉ならねば
725

思ふより
いかにせよとか
秋風に
なびく浅茅の
色異になる
724

陸奥の
忍ぶ餅摺
垂れゆゑに
乱れむと思ふ
我ならなくに
723

紅の
初花染の
色深く
思ひし心
我忘れめや
722

底恋ひなき
淵やは騒ぐ
山川の
浅き瀬にこそ
仇波は立て
721

淀川の
淀むと人は
見るらめど
流れて深き
心あるものを
720

絶えず行く
飛鳥の川の
淀みなば
心あるとや
人の思はむ
719

忘れなむ
我を恨むな
郭公
人の秋には
逢はむともせず
718

忘れなむ
と思ふ心の
尽くからに
ありしよりけに
待つぞ恋しき
717

明かでこそ
思はむ仲は
離れなめ
それをだに後の
忘れ形見に
716

空蝉の
世の人言の
繁ければ
忘れぬものの
枯れぬべらなり
715

蝉の声
聞けば悲しな
夏衣
薄くや人の
ならむと思へば
714

秋風に
山の木の葉の
移ろへば
人の心も
いかがとぞ思ふ
713

偽りと
思ふものから
今さらに
高誠をか
我は頼まむ
712

偽りの
なき世なりせば
いかばかり
人の言の葉
嬉しからまし
711

いで人は
言のみぞ良き
月草の
移し心は
色異にして
710

高里に
夜離れをして
郭公
ただここにしも
寝たる声する
709

玉葛
這ふ木あまたに
なりぬれば
絶えぬ心の
嬉しけもなし
708

須磨の海人の
塩焼く煙
風を痛み
思はぬ方に
たなびきにけり
707

大幣と
名にこそ立てれ
流れても
つひに寄る瀬は
ありてふものを
706

大幣の
引く手あまたに
なりぬれば
思へどえこそ
頼まざりけれ
705

かすかすに
思ひ思はず
問ひ難み
身を知る雨は
降りぞまされる
704

里人の
ことは夏野の
繁くとも
別れ行く君に
逢はざらめやは
703

夏引きの
手引きの糸を
繰り返し
事繁くとも
絶えむと思ふな
702

梓弓
引き野の葛の
末つひに
我が思ふ人に
言の繁けむ
701

天の原
踏み轟かし
鳴る神も
思ふ仲をば
裂くものかは
700

かく恋ひむ
ものとは我も
思ひにき
心の裏ぞ
まさしかりける
699

三吉野の
大川の辺の
藤波の
並みに思はば
我が恋めやは
698

恋しとは
高名付けけむ
ことならむ
死ぬとぞ直に
言ふべかりける
697

敷島や
大和にはあらぬ
唐衣
衣更へずして
逢ふよしもがな
696

津の国の
難波を思はず
山城の
永久に逢ひ見む
ことをのみこそ
695

あな恋し
今も見てしか
山賤の
垣穂に咲ける
山撫子
694

宮木野の
本荒の小萩
露重み
風を待つごと
君をこそ待て
693

君来ずは
寝やへも入らじ

我がもと結ひに
霜は置くとも
692

月夜よし
よよしと人に
付けやらば
小蝶に似たり
待たずしもあらず
691

今来むと
言ひしばかりに
長月の
有明の月を
待ち出でつるかな
690

君や来む
我や行かむの
いさよひに
槇の板戸も
ささず寝にけり
689

寒しろに
衣片敷き
今宵もや
我を待つらむ
宇治の橋姫
688

思ふてふ
ことの葉のみや
秋を経て
色も変はらぬ
ものにはあるらむ
687

飛鳥川
淵は瀬になる
世なりとも
思ひそめてむ
人は忘れじ
686

枯れ果てむ
後をば知らで
夏草の
深くも人を
思ほゆるかな
685

心をぞ
わりなきものと
思ひぬる
見るものからや
恋しかるべき
684

春霞
たなびく山の
桜花
見れども飽かぬ
君にもあるかな
683

伊勢の海人の
朝な夕なに
かつぐてふ
海松に人を
飽くよしもがな
682

石間行く
水の白波
立ち返り
かくこそは見め
飽かずもあるかな
681

夢にだに
見ゆとは見えし
朝な朝な
我が面影に
尽くる身なれば
680

君てへば
見まれ見ずまれ
富士の嶺の
めづらしけなくも
燃ゆる我が恋
679

石上
布留の中道
なかなかに
見ずは恋しと
思はましやは
678

逢ひ見ずは
恋しきことも
なからまし
音にぞ人を
聞くべかりける
677

陸奥の
安積の沼の
花かづみ
かつ見る人に
恋ひや渡らむ
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