年の内に
春は来にけり
一とせを
こそ年や言はむ
今年とや言はむ
(1)
年の内に 春は来にけり 一とせを こそ年や言はむ 今年とや言はむ (1)
見る人も
なき山里の
桜花
ほかに散りなむ
後ぞ栄まし
(68)
なき山里の
桜花
ほかに散りなむ
後ぞ栄まし
(68)
我が宿の
花見がてらに
来る人は
散りなむ後ぞ
恋しかるべき
(67)
花見がてらに
来る人は
散りなむ後ぞ
恋しかるべき
(67)
桜色に
衣は深く
染めて着む
花の散りなむ
後の形見に
(66)
衣は深く
染めて着む
花の散りなむ
後の形見に
(66)
折り取らば
惜しけにもある
桜花
いさや宿借りて
散るまで見む
(65)
惜しけにもある
桜花
いさや宿借りて
散るまで見む
(65)
散りぬれば
恋ふれどしるし
なきものを
今日こそ桜を
折らば折りてめ
(64)
恋ふれどしるし
なきものを
今日こそ桜を
折らば折りてめ
(64)
今日来ずば
明日は雪とぞ
降りなまし
消えずはありとも
花と見ましや
(63)
明日は雪とぞ
降りなまし
消えずはありとも
花と見ましや
(63)
あだなりと
何こそ立てれ
桜花
年に稀なる
人も待ちけり
(62)
何こそ立てれ
桜花
年に稀なる
人も待ちけり
(62)
桜花
春くははれる
年だにも
人の心に
飽かれやはせぬ
(61)
春くははれる
年だにも
人の心に
飽かれやはせぬ
(61)
み吉野の
山辺に咲ける
桜花
雪かとのみぞ
誤たれける
(60)
山辺に咲ける
桜花
雪かとのみぞ
誤たれける
(60)
桜花
咲きにけらしな
葦引きの
山の峡より
見ゆる白雲
(59)
咲きにけらしな
葦引きの
山の峡より
見ゆる白雲
(59)
誰しかも
留めて折りつる
春霞
立ち隠すらむ
山の桜を
(58)
留めて折りつる
春霞
立ち隠すらむ
山の桜を
(58)
色も香も
同じ昔に
桜めど
年ふる人ぞ
新たまりける
(57)
同じ昔に
桜めど
年ふる人ぞ
新たまりける
(57)
見渡せば
柳桜を
漕ぎ交ぜて
都ぞ春の
錦なりける
(56)
柳桜を
漕ぎ交ぜて
都ぞ春の
錦なりける
(56)
見てのみや
人に語らむ
桜花
手ごとに折りて
家苞にせむ
(55)
人に語らむ
桜花
手ごとに折りて
家苞にせむ
(55)
石走る
滝なくもがな
桜花
撓りても来む
見ぬ人のため
(54)
滝なくもがな
桜花
撓りても来む
見ぬ人のため
(54)
世の中に
絶えて桜の
なかりせば
春の心は
のどけからまし
(53)
絶えて桜の
なかりせば
春の心は
のどけからまし
(53)
年経れば
齢は老いぬ
しかはあれど
花をし見れば
物思ひもなし
(52)
齢は老いぬ
しかはあれど
花をし見れば
物思ひもなし
(52)
山桜
我が見に来れば
春霞
峰にも尾にも
立ち隠しつつ
(51)
我が見に来れば
春霞
峰にも尾にも
立ち隠しつつ
(51)
山高み
人もすさめぬ
桜花
いたくな侘びそ
我見早さむ
(50)
人もすさめぬ
桜花
いたくな侘びそ
我見早さむ
(50)
今年より
春知りそむる
桜花
散ると言ふこと
習はざらなむ
(49)
春知りそむる
桜花
散ると言ふこと
習はざらなむ
(49)
散りぬとも
香をだに残せ
梅の花
恋しき時の
思ひ出にせむ
(48)
香をだに残せ
梅の花
恋しき時の
思ひ出にせむ
(48)
散ると見て
あるべきものを
梅の花
うたて匂ひの
袖に留まれる
(47)
あるべきものを
梅の花
うたて匂ひの
袖に留まれる
(47)
梅が香を
袖に移して
留めてば
春は過ぐとも
形見ならまし
(46)
袖に移して
留めてば
春は過ぐとも
形見ならまし
(46)
来ると明く
止め難きものを
梅の花
いつの人待に
移ろひぬらむ
(45)
止め難きものを
梅の花
いつの人待に
移ろひぬらむ
(45)
年を経て
花の鏡と
なる水は
散り懸かるをや
曇ると言ふらむ
(44)
花の鏡と
なる水は
散り懸かるをや
曇ると言ふらむ
(44)
春ごとに
流るる川を
花と見て
折られぬ水に
袖や濡れなむ
(43)
流るる川を
花と見て
折られぬ水に
袖や濡れなむ
(43)
人はいさ
心も知らず
故郷は
花ぞ昔の
香に匂ひける
(42)
心も知らず
故郷は
花ぞ昔の
香に匂ひける
(42)
春の夜の
闇はあやなし
梅の花
色こそ見えね
香やは隠るる
(41)
闇はあやなし
梅の花
色こそ見えね
香やは隠るる
(41)
月夜には
それとも見えず
梅の花
香を訪ねてぞ
標かりける
(40)
それとも見えず
梅の花
香を訪ねてぞ
標かりける
(40)
梅の花
匂ふ春辺は
暗ふ山
越ゆれどしるく
ぞありける
(39)
匂ふ春辺は
暗ふ山
越ゆれどしるく
ぞありける
(39)
君ならで
誰にか見せむ
梅の花
色をも香をも
知る人ぞ知る
(38)
誰にか見せむ
梅の花
色をも香をも
知る人ぞ知る
(38)
よそにのみ
あはれとぞ見し
梅の花
飽かぬ色香は
折りてなりけり
(37)
あはれとぞ見し
梅の花
飽かぬ色香は
折りてなりけり
(37)
鶯の
笠に縫ふといふ
梅の花
折りてかざさむ
老い隠る宿
(36)
笠に縫ふといふ
梅の花
折りてかざさむ
老い隠る宿
(36)
梅の花
立ち寄るばかり
ありしより
人の問はむる
香にぞ染みぬる
(35)
立ち寄るばかり
ありしより
人の問はむる
香にぞ染みぬる
(35)
宿近く
梅の花植ゑし
あぢきなく
待つ人の香に
誤たれけり
(34)
梅の花植ゑし
あぢきなく
待つ人の香に
誤たれけり
(34)
色よりも
香こそあはれと
思ほゆれ
誰が袖触れし
宿の梅ぞも
(33)
香こそあはれと
思ほゆれ
誰が袖触れし
宿の梅ぞも
(33)
折りつれば
袖こそ匂へ
梅の花
ありとやここに
鶯の鳴く
(32)
袖こそ匂へ
梅の花
ありとやここに
鶯の鳴く
(32)
春霞
立つを見捨てて
行く雁は
花なき里に
住みや慣へる
(31)
立つを見捨てて
行く雁は
花なき里に
住みや慣へる
(31)
春来れば
雁帰るなり
白雲の
道行き振りに
言とや告げまし
(30)
雁帰るなり
白雲の
道行き振りに
言とや告げまし
(30)
遠近の
便りも知らぬ
山中に
おぼつかなくも
呼ぶ小鳥かな
(29)
便りも知らぬ
山中に
おぼつかなくも
呼ぶ小鳥かな
(29)
百千鳥
さへづる春は
物ごとに
改まれども
我ぞ古り行く
(28)
さへづる春は
物ごとに
改まれども
我ぞ古り行く
(28)
浅緑
糸より懸けて
白露を
珠にも貫ける
春の柳か
(27)
糸より懸けて
白露を
珠にも貫ける
春の柳か
(27)
青柳の
糸より懸くる
春しもぞ
乱れて花の
ほころびにける
(26)
糸より懸くる
春しもぞ
乱れて花の
ほころびにける
(26)
我が背子が
衣春雨
降るごとに
野辺の緑ぞ
色増さりける
(25)
衣春雨
降るごとに
野辺の緑ぞ
色増さりける
(25)
常盤なる
松の緑も
春来れば
今一入の
色増さりけり
(24)
松の緑も
春来れば
今一入の
色増さりけり
(24)
春の着る
霞の衣
抜きを薄み
山風にこそ
乱るべらなれ
(23)
霞の衣
抜きを薄み
山風にこそ
乱るべらなれ
(23)
春日野の
若菜摘みにや
白妙の
袖振りはへて
人の行くらむ
(22)
若菜摘みにや
白妙の
袖振りはへて
人の行くらむ
(22)
君がため
春の野に出でて
若菜摘む
我が衣手に
雪は降りつつ
(21)
春の野に出でて
若菜摘む
我が衣手に
雪は降りつつ
(21)
梓弓
押して春雨
今日降りぬ
明日さへ降らば
若菜摘みてむ
(20)
押して春雨
今日降りぬ
明日さへ降らば
若菜摘みてむ
(20)
深山には
松の雪だに
消えなくに
都は野辺の
若菜摘みけり
(19)
松の雪だに
消えなくに
都は野辺の
若菜摘みけり
(19)
春日野の
飛火の野守
出でて見よ
今幾日ありて
若菜摘みてむ
(18)
飛火の野守
出でて見よ
今幾日ありて
若菜摘みてむ
(18)
春日野は
今日もな焼きそ
若草の
妻も籠もれり
我も籠もれり
(17)
今日もな焼きそ
若草の
妻も籠もれり
我も籠もれり
(17)
野辺近く
家居しせれば
鶯の
鳴くなる声は
朝な朝な聞く
(16)
家居しせれば
鶯の
鳴くなる声は
朝な朝な聞く
(16)
春立てど
花も匂はぬ
山里は
物憂かる音に
鶯ぞ鳴く
(15)
花も匂はぬ
山里は
物憂かる音に
鶯ぞ鳴く
(15)
鶯の
谷より出づる
声なくば
春来ることを
誰か知らまし
(14)
谷より出づる
声なくば
春来ることを
誰か知らまし
(14)
花の香を
風の便りに
託へてぞ
鶯誘ふ
標にはやる
(13)
風の便りに
託へてぞ
鶯誘ふ
標にはやる
(13)
谷風に
解くる氷の
隙ごとに
打ち出づる浪や
春の初花
(12)
解くる氷の
隙ごとに
打ち出づる浪や
春の初花
(12)
春来ぬと
人は言へども
鶯の
鳴かぬ限りは
あらじと思ふ
(11)
人は言へども
鶯の
鳴かぬ限りは
あらじと思ふ
(11)
春や疾き
花や遅きと
聞き分かむ
鶯だにも
鳴かずもあるかな
(10)
花や遅きと
聞き分かむ
鶯だにも
鳴かずもあるかな
(10)
霞立ち
木の芽も春の
雪降れば
花なき里も
花ぞ散りける
(9)
木の芽も春の
雪降れば
花なき里も
花ぞ散りける
(9)
春の日の
光に当たる
我なれど
頭の雪と
なるぞ侘しき
(8)
光に当たる
我なれど
頭の雪と
なるぞ侘しき
(8)
心差し
深く染めてし
折りければ
消え敢へぬ雪の
花と見ゆらむ
(7)
深く染めてし
折りければ
消え敢へぬ雪の
花と見ゆらむ
(7)
春立てば
花とや見らむ
白雪の
懸かれる枝に
鶯ぞ鳴く
(6)
花とや見らむ
白雪の
懸かれる枝に
鶯ぞ鳴く
(6)
梅が枝に
来ゐる鶯
春掛けて
鳴けどもいまだ
雪は降りつつ
(5)
来ゐる鶯
春掛けて
鳴けどもいまだ
雪は降りつつ
(5)
雪の内に
春は来にけり
鶯の
凍れる涙
今や解くらむ
(4)
春は来にけり
鶯の
凍れる涙
今や解くらむ
(4)
春霞
立てるやいづこ
み吉野の
吉野の山に
雪は降りつつ
(3)
立てるやいづこ
み吉野の
吉野の山に
雪は降りつつ
(3)
袖ひぢて
結びし水の
凍れるを
春立つ今日の
風や解くらむ
(2)
結びし水の
凍れるを
春立つ今日の
風や解くらむ
(2)
年の内に
春は来にけり
一とせを
こそ年や言はむ
今年とや言はむ
(1)
春は来にけり
一とせを
こそ年や言はむ
今年とや言はむ
(1)