巻六巻|冬
巻六巻|冬
行く年の
惜しくもあるかな
ます鏡
見る影さへに
暮れぬと思へば
(342)
惜しくもあるかな
ます鏡
見る影さへに
暮れぬと思へば
(342)
昨日といひ
今日と暮らして
明日香川
流れて早き
月日なりけり
(341)
今日と暮らして
明日香川
流れて早き
月日なりけり
(341)
雪降りて
年の暮れぬる
時にこそ
常にもみぢぬ
松も見えけれ
(340)
年の暮れぬる
時にこそ
常にもみぢぬ
松も見えけれ
(340)
あらたまの
年の終はりに
なるごとに
雪も我が身も
降りまさりつつ
(339)
年の終はりに
なるごとに
雪も我が身も
降りまさりつつ
(339)
我が待たぬ
年は来ぬれど
冬草の
枯れにし人は
訪れもせず
(338)
年は来ぬれど
冬草の
枯れにし人は
訪れもせず
(338)
雪降れば
木ごとに花ぞ
咲きにける
いづれを梅と
分きて折らまし
(337)
木ごとに花ぞ
咲きにける
いづれを梅と
分きて折らまし
(337)
梅の香の
降り置ける雪に
紛ひせば
誰か言々
分きて折らまし
(336)
降り置ける雪に
紛ひせば
誰か言々
分きて折らまし
(336)
花の色は
雪にまじりて
見えずとも
香をだに匂へ
人の知るべく
(335)
雪にまじりて
見えずとも
香をだに匂へ
人の知るべく
(335)
梅の花
それとも見えず
久方の
天霧る雪の
並べて降れれば
(334)
それとも見えず
久方の
天霧る雪の
並べて降れれば
(334)
毛布の上に
またも降りしけ
春霞
立たば深雪
まれにこそ見め
(333)
またも降りしけ
春霞
立たば深雪
まれにこそ見め
(333)
朝ぼらけ
有明の月と
見るまでに
吉野の里に
降れる白雪
(332)
有明の月と
見るまでに
吉野の里に
降れる白雪
(332)
冬籠り
思ひかけぬを
木の間より
花と見るまで
雪ぞ降りける
(331)
思ひかけぬを
木の間より
花と見るまで
雪ぞ降りける
(331)
冬ながら
空より花の
散り来るは
雲のあなたは
春にやあるらむ
(330)
空より花の
散り来るは
雲のあなたは
春にやあるらむ
(330)
雪降りて
人も通はぬ
道なれや
跡はかもなく
思ひ消ゆらむ
(329)
人も通はぬ
道なれや
跡はかもなく
思ひ消ゆらむ
(329)
白雪の
降りて積もれる
山里は
住む人さへや
思ひ消ゆらむ
(328)
降りて積もれる
山里は
住む人さへや
思ひ消ゆらむ
(328)
み吉野の
山の白雪
踏み分けて
入りにし人の
訪れもせぬ
(327)
山の白雪
踏み分けて
入りにし人の
訪れもせぬ
(327)
浦近く
降り来る雪は
白波の
末の松山
越すかとぞ見る
(326)
降り来る雪は
白波の
末の松山
越すかとぞ見る
(326)
み吉野の
山の白雪
積もるらし
故郷寒く
なりまさるなり
(325)
山の白雪
積もるらし
故郷寒く
なりまさるなり
(325)
白雪の
ところも分かず
降りしけば
岩ほにも咲く
花とこそ見れ
(324)
ところも分かず
降りしけば
岩ほにも咲く
花とこそ見れ
(324)
雪降れば
冬籠りせる
草も木も
春に知られぬ
花ぞ咲きける
(323)
冬籠りせる
草も木も
春に知られぬ
花ぞ咲きける
(323)
我が宿は
雪降りしきて
道もなし
踏み分けて訪ふ
人しなければ
(322)
雪降りしきて
道もなし
踏み分けて訪ふ
人しなければ
(322)
故郷は
吉野の山
近ければ
一日も深雪
降らぬ日はなし
(321)
吉野の山
近ければ
一日も深雪
降らぬ日はなし
(321)
この川に
紅葉は流る
奥山の
雪解けの水ぞ
今まさるらし
(320)
紅葉は流る
奥山の
雪解けの水ぞ
今まさるらし
(320)
降る雪は
かつ消ぬらし
あしひきの
山の滝つ瀬
音まさるなり
(319)
かつ消ぬらし
あしひきの
山の滝つ瀬
音まさるなり
(319)
今よりは
尽きて降らなむ
我が宿の
薄押し並み
触れる白雪
(318)
尽きて降らなむ
我が宿の
薄押し並み
触れる白雪
(318)
夕されば
衣手寒し
み吉野の
吉野の山に
深雪降るらし
(317)
衣手寒し
み吉野の
吉野の山に
深雪降るらし
(317)
大空の
月の光し
清ければ
影見し水ぞ
まづ凍りける
(316)
月の光し
清ければ
影見し水ぞ
まづ凍りける
(316)
山里は
冬ぞ寂しさ
まさりける
人目も草も
枯れぬと思へば
(315)
冬ぞ寂しさ
まさりける
人目も草も
枯れぬと思へば
(315)
竜田川
錦織りかく
神な月
時雨の雨を
縦貫きにして
(314)
錦織りかく
神な月
時雨の雨を
縦貫きにして
(314)
巻六巻|冬